ボクとい草の物語④

いよいよ二度目のい草の聖地八代に行く日が来た。

と言っても前回行ってからまだ一ヶ月しか経ってないけど(笑)

今回は前回同様、農家さんを回るのはもちろん、

農家さんとの飲み会までセッティングされた粋なツアー。

というのも、農家さんは外部から人がくると方言をわかりやすく翻訳しなければと思うあまり口数が少なくなるとのこと※JA担当者曰く。

だから

「農家を知りたくば飲むのが一番早い!!!」

らしい。

そして胸を躍らせながら八代に到着。

もう躊躇することもなくJAへ。

そこに待っていてくれた担当者さんと共にいざ農家さんの織り工房へ。

後に知るのですが前回も今回も時期は冬。 1,2月は田んぼに行くことも少なく製織がメインな時期。

しかし、い草を育てる作業と、それを織る作業両方やるのだから本当に頭が下がる。

(別々の方もいらっしゃいますが)

そしてまた軽トラで夢を語らいながら、というか一方的僕が話しているだけですが、

「前回来て勇気出して良かったっす。」だとか

「世界が変わって見えました」だとか、

「実はこの前連れて行って頂いた農家さんの表が届いたんです。驚き桃の木山椒の木です。がはははは」

的なことを言いつつ、   農家さんに到着。

そうまたまた粋なはからいでまずは先日届いたというその例の表の生産者さんのところへ。

まずはお礼を言い、

どんな縁を付けただとか、

敷き込んだ後のお客さんの喜びようだとか、 ありとあらゆることを伝えました。

それはまるでテストで100点取った子供が母親に報告するかのようになテンションで。

すると生産者さんは

「そんなこと初めて教えてもらった。嬉しい」

と喜んで下さり、本当に人は人の喜びが一番のご褒美なんだと思いました。

そしてこの時に生産者さんとつながる最大のメリットを知りました。

そのあと渡辺さんの所や、前回行ってない所にも連れて行って頂き、

今回のメインイベント農家さんとの合同コンパ。

畳屋1人にJAの方1人に農家さんが6人での八代飲みが始まった。

※まず知らない方に八代飲みを紹介。

八代飲みとはターゲットを見つけ、まず自分のビールをぐいっと飲み空ける。

そして熱く熱く目を見て、グッと手を取りグラスを渡し、ビールを注ぐ。

そのビールを飲む間に色んな話をして交流するのだ。(よう知らんけどそう認識しただけ。)

そして飲んだらグラスが戻ってきてビールを注がれ、第一面会終了。宴もたけなわです。

そんな感じでゆっくり語らいながら飲み明かすわけですが、

何せ初めてなもんで、しかも農家さんにとってターゲットは僕だけでして。

初体験な僕は異常なほどのハイペース。 常にここは飲まずに帰れまい状態。

話を聞きに行ったのに何を聞いたか覚えてないし(笑)

ただ終始 「い草は良い。い草は良いんです」と言ってたそうな。

それだけでも農家さんにとって励みになったぞっ!!と、次の日JA担当者さんに言われて、

二日酔いながらに、口から何かが出るほど嬉しかった。

そう。実を言うと、この二度目の遠征を最後に僕は何年間か八代に行かなくなったんです。

それは家業が忙しくなっただとか、

売 るのが最優先になったとか色んな言い訳がありますが、

多分なにか満足しちゃったんだと思う。

今思えば驕り以外の何物でもないけど、

二度の八代遠征だけですべてわかったような気がしてたんだろうな。

バカなやつです。

そして一度目の遠征を終えた後の気持ちも薄れつつ月日は流れ、数年たったあと、

JA担当者さんから電話があった。

「最近来んくなったな。忙しがか? 良いことたい。」

二回行っただけで行かなくなった僕は少し気まずく感じながら話を聞いた。

「お前と回った農家な、実は野菜に転向したったい。」

えっ??

その時の僕はすぐに理解は出来なかったけど、

ものすごく寂しくショックだったのを今でも覚えてる。

これも後に知るんですが、実はい草は周期が長いので(苗からすると2年近く)現実的に資金繰りが厳しい。

うまく行ってる農家さんは良いが、天候不良や価格変動などで苦労される方が多い農作物なんです。

実際今でも野菜に転向する方は多く、(野菜が好調ということもあり)

しかし、本意なれど不本意なれど、生活のため、家族を守るために い草じゃない道を選択する農家さんを責めることは出来ない。

全部僕たち畳屋が悪いのだから。

そして僕は聞いた。

「皆さん、皆さん辞められたのですか?」

「何人かはまだしよる。」

そして

「だから忙しいだろうけどまた来て励ましてやってくれな」   って。

僕はバカだ。

一度や、二度行っただけで何が伝えられたんだ?

なんの励みにもなってないし、

畳屋として現実そんなに業績も伸ばせてないし。

何を偉そうに農家さんのことわかってるふりしてんだ?。

ショックでした。本当に。

そして伝え続けなければ、本当にい草が無くなってしまう。

激しい危機感と罪悪感を感じた。

つづく

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