ボクとい草の物語⓪ 前編 〜俺、畳屋やるよ〜

僕は畳屋になるつもりはありませんでした。

高校卒業後は

「音楽で飯を食っていく」

と福岡市へ飛び出しました。

バイトとライブの日々、畳のことなどこれっぽっちも頭になかったです。

そんなある日、知人の甘い言葉にまんまと乗ってしまい

消費者金融から多額の借金をしてしまいました。

それからは返済に追われ音楽もままならず、アルバイトばかりしてました。

「僕は何をしにここにきたんだ?」

「僕は何のために生まれてきたんだ?」

毎日そんなことばかり考えながらなんとか生き延びてました。

生きるために生きてると言った感じです。

たまにある休みの日は吸えもしないタバコ買って海が近かったので、海にぼんやり歩いて行って、

一日中座ってました。

釣り人にも心配され、

散歩中のわんちゃんにも二度見され飼い主が引っ張れど動かないくらい見られてたのは今でも鮮明に覚えています。

動物の感覚ってすごい(何の話やねん)

まあそのくらい負のオーラが凄かったんだと思います。

バイト先でも人と話すのも嫌になっている時期でした。

「なんか今の雰囲気ののりたろー好きじゃない」

と言われたりもしました。

そりゃそうです。

俺は音楽で飯食ってくんだーーって意気揚々として、

そのためにバイトしてた頃とは全く違うマインドな訳ですから。

そんなこんなで

一年が過ぎたある日、

母から電話がありました。

いつもは弱音なんかはかない母が一言

「正直少しキツいかも」とボソっと言いました。

僕はハッとしました。

僕が音楽に力をもらったように、僕は世界中に愛を込めた歌を届けるんだ!

なんて大きなことばかり言ってましたが、

誰一人幸せに出来ていないじゃないか。

家族のこと、家業のこともかえりみず好き勝手やって借金つくってやさぐれてる。

ダセェ。

僕はなんてダメなやつなんだ。

そして二言目には言ってました。

「オレ、畳屋やるよ」

母を助けてあげたいからと言えばカッコよく聞こえるかもしれませんが、

ただ逃げたかったんです。

1人で悩む日々から。

今のダセェ生活から。

ただ逃げて田川に、そして畳屋に逃げ帰ってきました。

中編へ続く

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